#10 かわいいはつくれる、かわいいはつかれる、鏡に映ったわたしで泣ける(2014)

MacGuffins#10 かわいいはつくれる、かわいいはつかれる、鏡に映ったわたしで泣ける(2014)

劇団員からは「かわつく」という略称で呼ばれていました。
「ベランダから住宅地(街並み)を見ている様子。手前にビールの缶(ぼかして)」
たしかサンプルの写真を送っていただいて。
その理想になかなか近づけなくて苦戦した思い出です。

まずは自宅ベランダに立ってみました。隣家の壁が見えるだけ。
実家は周辺が田畑なのでこれも違います。
「人の家を借りる」を最終手段に残し、市内をめぐる旅に出ました
街並みが見渡せる場所ということで思いついたのが
イオン立体駐車場とアピタ立体駐車場です。
行ってみてわかったのですが、立体駐車場は高すぎました。
そりゃそうだ。
田舎の住宅街ということで、周辺には戸建やお店が並んでいるのですが
アパートは大体2階建、高層マンションなんかもないので
それよりもはるかに高い位置(立体駐車場)から撮るとベランダ感は全く出ません。
そしてビールの空き缶とカメラを持っているので不審者極まりなく
警備員がまっすぐこちらにやってきては逃げるという落ち着かない時間でした。(※施設は撮影禁止です)

人の家を借りる、といっても実家暮らしの友人しかいないことを思い出します。
自宅から見た隣家の壁が蘇り、最終手段に思い描いていた手が
消えたことにあわわ…と震えます。
撮影に許された時間は瞬く間に過ぎ去り、白旗をあげることとなりました。
この間にもいろいろと巡ってはみたのですが
「ベランダ」にはたどりつけませんでした。
移動は車、手にはカメラと中身のない缶ビール。
空っぽとはいえ車移動、あまり気持ちのいいものではありません。
そして機材が十分揃えられていなかったため、ビール缶をボカすことが
できませんでした。広角レンズで手持ち(三脚もなし)、何度やっても
路上で撮影者が缶ビールを持っているだけの謎の画ができあがります。
期限が迫っているというのに完全にお手上げ状態。
とうとうある手段を言い渡されました。
「ビールの缶、合成でもいいです」
ううううううう…!!!!

フイルム写真にこだわりを持ち、ノートリミングにこだわり、
このチラシ以外にはめっきり写真を撮らなくなったにも関わらず、
この期に及んでまだデジタルカメラで写すということに、
違和感というかほんのりと抵抗感を持ったまま写していました。
さらには合成を最も苦手としておりました。
合成で面白い作品はたくさん見てきましたが、
「自分の作品には関係がない」ということで
「必要ないから上手くなる必要がない=やってこなかった=下手」という
残念な状態。そこに「合成してください」と言われてしまったわけです。
完全に自分の技術の範囲を越えていますが
一旦引き受けたものを、締切ぎりぎりで投げるわけにはいきません
1アクションごとにフリーズするPhotoshopとの闘いでした。

「裏面写真は缶ないバージョンでいきましょう!!!!」といわれて両面が完成。

仕上がりを見るのが億劫なほど打ちひしがれました。
「できないことがたくさんある」という自分に対してがっかりしてもいました。
もしかしたら今回で依頼が終わるかもしれない、というのを意識したのはこの頃です。
わたしより早く、上手く、センスのある人はきっといくらでもいる
だけど次回また依頼をもらえるなら
期待を越えるものをつくろう、と自分と約束をしました。