#9 お願いだから殴らないで(2014)

MacGuffins#9 お願いだから殴らないで(2014)

横田氏からのメール。

「場末の飲み屋街。レスラーマスクを被りスーツを着たサラリーマンが立っている」

ば-すえ【場末】
繁華街の中心部から離れた場所。また、都心からはずれた場所。

再演ということで、マスクは前回使用したものを東京から送っていただきました。
まずは「場末の飲み屋街」を探しに西に東に旅に出ました。大阪に住む友人に飲み屋街の写真を送ってもらったり。
松阪駅周辺をぐるぐる歩いたり。でも、なんっか違う。
大阪の人からは「腐っても大阪」といわれました。場末感が出ない。どんな路地も人通りが多いのでおそらく撮影どころではなさそう。

そしてモデルはサラリーマン。
大抵のことは自分でどうにかできるのですが、体格的に男役はできません。スーツを着てみましたがアウトでした。それに仮にわたしがサラリーマンの格好をできたとしても、レスラーマスクを被って見知らぬ土地の飲み屋街でセルフタイマー?
いやどんだけハート強いねん。ないない。それはない。
場所とモデルをぐるぐると思案しながら日々は過ぎてゆきました。

ある日ぼんやりとつけていたMTVで斉藤和義氏のミュージックビデオが流れました。
名曲「歌うたいのバラッド」にわたしは釘付けになりました。
彼が歌っている場所が、まさに理想の飲み屋街でした。

「うおおおおおおおお見つけたーーーーーーーーー!!!これこれこれーーーーー!!!」

すぐさまGoogleで検索をして、場所がわかりました。

と、東京。

「ぐおおおおおおおお!!!!トーーーーキョーーーーーー!!!ムリーーーーー!!!」

東京。遠い。ロケハンにも行けない。ていうか場末はどうした。いや、新宿らしいし、ということはこの感じはおそらく、場末ではあるのだろう。が、どちみち気軽には行けない。ここに似た場所はないものか。
検索を続けた結果、なんと、なんと発見しました!!!!
我らが三重県!!!!です。四日市。いける、これならいける。
そして捕まえたモデルに運転をさせること1時間半(どんなカメラマン)、四日市に到着。

地元の人しか来ないような古い商店街のようで、正確な情報はほぼありませんでした。もし取り壊されていたらここで終了。どきどきしながら目的地に向かいます。

そして商店街入り口に到着。

「あ…あった…」

商店街の入り口看板には「明るい商店街」。(正式名称は三和商店街)
「どこがやねん」と言いたくなる佇まいでした。気になる方は検索してください。
人通りはほぼありません。
モデルはレスラーマスクを被ったスーツの男。ノリノリでもなんでもなく撮影前から「頼むから早くして、もう勘弁して」感たっぷりです。平日昼間の商店街。どこからどう見てもやべえ奴です。
さくさく撮ろう、さくさく。

心地よい緊張感のなかにいました。
たまに通るお年寄りの自転車のブレーキのけたたましさにビクッとなりながら、我々はとても静かに、そしてさくさくと撮影を続けました。
「舞台のセットのような場所が本当にあったこと」に妙なテンションになってしまっていて(ハイのほう)、
マスクを被ったモデルよりも、目をぎらぎらさせて「いいねー」「いいよー」とぼそぼそ言いながらカメラを向けているわたしのほうがよっぽどやべえ奴だったかもしれません。